2009年1月8日木曜日

いしかわは4eをどう思っているのか?(2)

(続)
んじゃあ、4eって、ダメなの?

どんなところが4eのいいところなの?

■プレイヤーはPHB1冊あればプレイ可能 
この点は大きい。非常に大きい。 
3.Xeでも同じ、とは言いながら、実際にはマジックアイテムや特殊能力を知るためにDMGが、サモン系呪文のためにMMが必要であるという現実があった。
しかし、4eではPHBにマジックアイテムまで掲載され、サモン系呪文は全て無くなった。 経済的な負担が1/2~1/3になる、というのは大きなアドバンテージと言えるだろう。

■PC/DMの準備が軽減された 
欠点として前述した点ではあるが、選択肢が減っていることの裏返しとして選択が容易になり、PC作成が非常にカンタンになっている。
慣れれば1キャラ作るのに30分程度で作れるようになるだろう。 
そして、DMの準備の負担軽減はそれ以上である。クリーチャーの行動指針がbrute /soldier / artillery /leaderなどタイプ別のテンプレートになったため、クリーチャーを使う目的にあわせてチューンするのがものすごく容易になった。 
Pilgrimさんはその例として「あるセッションで5体のヴロックを出した。2体をartillery、2体をsoldierにして、リーダーとして1体は2headにし、1Rに2行動を可能にした。このエンカウントを作るのに、僕は15分しかかからなかった」という。 
このエンカウントを3.Xeで作るのは容易だ。しかし、膨大な時間が必要となるのは言うまでもない。 
4eでなら、レベル毎にhpを、2レベル毎にボーナスを増やし、テンプレ能力を加算するだけでオリジナリティあるエンカウントを作れるのだ。 
ほかにも、「冒険向けのギミックが減った」ことで、いままでのように壁抜け対策だの立体機動対策だのに煩わされることが無くなった(*7)のもシナリオ作りをイージーにしてくれるだろう。
その割に、戦闘に関する楽しみはそれなりに保たれてる(序盤だとやることが無くなって手詰まり、という局面も少なくないが、ある程度レベルが上がればパワーのやりくりでいろんなオプションが取れる)んで、このへんは良い点かなーと。

■役割分担の明確化 
これまで曖昧に表現されてきた「壁」とか「剣」とかってパーティ内での役割が制御役・撃破役・指揮役・防衛役として明確化され、割り当てられた各クラスもその役割が果たしやすいような能力/パワーが得られるようデザインされている。 
これもプレイ上良い点であると思う。
これまではパーティ作るためにはクラスだけでなく「どんな狙いで作られたPCか」を聞かないとわからなかったのが、クラスを見るだけでほぼ理解できる。

■パワーによるリソース管理 
呪文や戦闘オプションの大半は「パワー」として管理されるようになった。 
できることが全てユニット化され、とりあえずパワーのリスト見ればできることが一目でわかるというのは非常にわかりやすい。 
また無限回パワーが全キャラに供給されているので「戦闘中やることがない」という状態が無くなっているのも良いと思う。 
他方、これまで術者達がしていたようなリスト管理を全PCがしなければならなくなった、すなわち3.Xeのように「初心者ならパラディンやらせとけ」的なアレがやりにくくなったりもしてるけど。
ドンマイ。

■「強い呪文」が消える 
3.Xeにおける「強力な呪文」とは、実はダメージの大きい呪文ではない。
呪文はカンタンに無効化されてしまうし、与ダメージ量でも前衛クラスには適わないのはちょっとやりこんだプレイヤーなら誰もが知っていることだろう。 
そう、3.Xeにおける「強力な呪文」とは、「敵を無力化する呪文」、そして「味方を強化する呪文」に他ならない。
前者はグリース、グリッターダスト、コーズフィアーあたり、後者はメイジアーマーからはじまって枚挙にいとまがない。 
これらはうまく使うことで脅威を容易に解消できるという「魔法使いらしさ」を醸し出していたが、反面複雑なルール運用と煩雑な判定を必要としていた。 

4eではこの種の呪文がほとんどなくなり、よってこれまで行われてきたいわゆる”戦闘前の儀式”がほとんど無くなった。
多くのPCは自分の能力と他PCのパワーとのコンビネーションで戦うようになった。 
戦闘中にこまこまと命判+2とか+4とかされるとその方が管理めんどくさくね? という意見もあるが、いままでのような「定番」が無くなったというのはゲームを知らない人達の敷居が下がる意味で良いのでは、とか思う。 

■新しいギミック 
そのほか、いろいろ増えてるなかで面白いのをいくつか列記。
・マーク: 
戦術に新しい可能性を与えているし、「役割」にも合致した良いギミックだと思う。
・パワーと特殊能力: 
ウォーロックの呪いとかレンジャーの獲物、あと前述した無限回パワーなんかはプレイ中ヒマな人を作らない良いギミックだ。命判必要なのが多いのがちょっとアレかな、という気もするけど、どうせじきに新しいサプリで自動命中のとかが出るだろ。【投げやりに】
・技能チャレンジ: 
DMGに載ってるままだとダルい(高技能値のヤツが一人でえんえん振るのが一番効率がいい)だけだけど、時間制限付けるとかちょっといじれば面白い仕掛けにできると思う。

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おなじD&Dて名前を冠していても、3eがAD&D2ndと別ゲームだったように、4eは3.Xeとは全く別のゲームだ。
その変貌があまりにドラスティックで、しかも従来プレイヤーの多くには面白いと感じられる方向性ではなかったがために、現在のような状態になっているのではないかと思う。
実はこのへんの議論は、本国アメリカでも同じように巻き起こっていた。 
4e発売直後にはWotCのオフィシャルな(!)BBSに「Good bye 4e forever」というスレが立てられ「もうこんなゲームやらねえよ!」という旧来ファンの書き込みが大量になされていたりもした。 
そんでそれに逆ギレした某デザイナーが「もういいわけはしない」って題でブログ書いたりとか。 
面白すぎる。

実際、アメリカでも序盤は苦戦していたようだ。 
一時は多くのプレイヤーが離れ、あるいは1,2度プレイした段階で3.5eに戻っていったという話も聞いた。 
しかしLiving FRがはじまった8月からはプレイヤーが増加をはじめ、いまではたくさんの新規プレイヤーを得るに至っているという(*6)。
移行しないという人達も変わらず存在しているものの、多くのTRPGサークルは以前と変わらず繁盛してるとのこと。 Pilglimさんのところだけではもちろんなく、LFRはwiki(http://forgottenrealms.wikia.com/wiki/Living_Forgotten_Realms:Main_Page)や運営のためのいろんなサイト(http://www.livingforgottenrealms.net/ とか)が作られ、掲示板では活発に意見交換がなされている。  

ここからわかることは、WotCの方針が世界やセッションサポートに重点を置いているっぽいこと、つまりはこれまでの「面白いルールやギミックを充実させる」という方向から、「良いセッションをすること」を推進し、サポートする方向に舵を切っているのではないか、ということだ。 
そしてルール面のサポートはサプリメントで、セッション面でのフォローはウェブとRPGAで、というのがいまの進め方なのではないか、という気がする。

面白いセッティングで良質なシナリオ(*9)を供給し、良いセッションをすること。それが、新しい4eに適合した、新しいD&D”独自の”おもしろさを作り出していくのだろう。

そして、逆に言えば、これまでのようにルールを追っかけるだけで楽しめる時代は終わりを告げ、セッション内容でがんばらないといけない時代が来るのかも知れない。



そんなわけで、今年は従来のようなプレイエイドだけでなく、プレイ関連のもの--シナリオとかリプレイとか--をもうちょっとがんばらなきゃなのかなーとか思ってます。

っても新しいサプリが出たらまたルール総ざらいして強いパワー捜すんだろうけど(笑)。



*6:アメリカ在住の濃ゆいD&Dプレイヤー Pilglimさんから聞きました。彼は日本に4年ほど滞在した後、LAに戻ってリビングFRやGH,RPGAなんかでプレイしてるそうです。
*7:まあ、時間の問題だろうとは思うけどね【ジェナシの種族パワーとか見ながら】
*9:考えてみたら現状で日本語で出てるオフィシャルなシナリオって「シャドウフェル」だけで、こんな(以下危ないので略)なシナリオを基準に考えてたら、そらアレなことになるよなー。とか危険なことを思ってみたり。

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