ということで第1回。
あ、公式シナリオまんまなので、超ネタバレ。なので、Kingmakerで遊ぶ予定の人は読まないことをおすすめします。
参加PCは以下の5名。
・アルティン=ゲール PLゆづる
エラスティルのパラディン(ホスピタラー) 人間 秩序にして善
・ジュゼッペ PL.L-Heart
ファイター(ファランクスソルジャー) 人間 秩序にして中立
・マルティン=ルーサー PL 扇
デスナのクレリック 人間 混沌にして善
・マルルイス PL備前屋
バーバリアン1/ローグ1 ハーフエルフ 混沌にして中立
・リルカ PLうら
ウィッチ 人間 混沌にして中立
***
ブレヴォイの南端の街レストヴからさらに南に広がる平原は『盗まれし領土(ストーレンランド)』と呼ばれていた。
かつて ブレヴォイ の一部であったこの平原は、タルドールの侵攻やリバーキングダムとの戦い、そして追放された盗賊たちや東のリバーキングダムの河賊、さらには近隣に住むコボルドやオーガ、トロルたちによって無法の地と化しており、いまや国境さえ不確かとなっている。
近隣を治める豪族--剣卿(ソードロード)達は肥沃な平原を我が土地とすべく、開拓民を募っては送り込み、またときには兵を集めて征伐行を行ったが、深い森に潜む盗賊や亜人たち、そしてストーレンランドに住む魔物や怪物の襲撃により、開拓は遅々として進まなかった。
兵の力による開拓の難しさを知った剣卿たちは、直接の統治をあきらめ、荒事を得意とする者を募り、開拓と統治を任せることを布告したこれにより、剣卿は租税と領土を、そして冒険者たちは封土と爵位を手に入れる。
現在、貴族に成り上がる夢を胸を宿した若者たち、そして傭兵や冒険者たちが次々とストーレンランドに入っている。
この物語は、そんなストーレンランドの一角、ロストランド平原の南通商路に建てられた小さな交易所で始まる。
冒険者たちが『オレグの交易所』に着いたのは昼を過ぎたころだった。
レストヴの募兵官にストーレンランド西方、市井ではグリーンベルトと呼ばれる地域に向かうよう命じられた彼らは、この交易所を調査の拠点に指示されていた。
彼らの任務は第一にグリーンベルト一帯の地図を作成し、開拓するに当たっての脅威や、入植時の資源の有無を明らかにすること、第二に調査した地域の危険を極力排除し、入植を可能にすること、そして第三にグリーンベルトの森に隠れていると言われる盗賊団を排除することである。
「これらをすべて成し遂げた暁には、剣卿自ら爵位とともに封土をお与え下さるとの布令が下されておる。また、賞金のかけられた罪人や怪物もおるので、捕えたり倒したときには適宜報告するように」
募兵官はおっくうそうに一通りの説明を終えると、席を立ちながら付け足した。
「もっとも、ここ数ヶ月いまと同じ説明を何度もしているが、一人として報告に戻れた者はおらんがな」
交易所は平原を横断する、この地方唯一の交易路にほど近い丘に建てられていた。外周数百ftほどのこぢんまりとした建物は、周囲を頑丈そうな塀に囲まれており、屋根には襲撃者に備えてなのか、カタパルトも備え付けられている。
一つだけの門は固く閉ざされていたが、一行が近づくと中年男がうれしそうに飛び出してきた。
「ああ、やっと来てくれた! 待ってましたよ!」
***
GM「やや額の広くなりかかった中年男は満面の笑みを浮かべて君たちを中に招き入れる。交易所、というよりちょっとした砦のようなそこは、母屋の他に倉庫や馬小屋があり、一通りの宿泊施設は整っているようだ。
中年男「いやあ、ようやっと剣卿さまも兵を送って下さったんだな。私はオレグ、ここの主だ。向こうは女房のスヴェタナ。」
アルティン「ん? 『兵』?」
オレグ「……え? 盗賊への守りのために来てくれたんじゃないの?」
話を聞けば、オレグの交易所はまだできて3ヶ月ほどにもかかわらず、1日ほど離れた森からやってくる盗賊に襲われ、以来毎月1日には盗賊たちが”収税”と称して金を奪いにやってくるという。
アルティン「毎月1日……って、次は何日後?」
GM「あさってw」
マルルイス「すぐじゃんw まあ、敵の方から来るっていうならこっちで待ち伏せしましょう」
マルティン「敵は何人くらい?」
オレグ「最初は12人で、2回目のときは8人で来ました。次が3回目です。いつも夜明けと同時にやってきます」
一行はオレグから盗賊の行動パターンを聞き出し、待ち伏せの計画を立てる。
最終的に、乗騎のあるアルティンが外に潜み、残りのメンバーは馬小屋や倉庫に潜む、盗賊が兵の内側に全員入ったところで一斉に襲撃し、アルティンは門の前に陣取って敵を逃がさない、という方針が決められた。
そして、当日。
夜明け前に所定の位置に着いたPCたちは、盗賊をじっと待ち構える。
東の空が茜色に染まり、やがて草原が紺から青、そして緑に色を変えたころ、地平線の向こうから蹄の音が響いてきた。
オレグの交易所にだんだんと近づくその音は、おそらく6騎。
全員が息を殺したまま、そっと武器や呪文の準備を始める。
蹄の音が門の外で止まった。
盗賊頭「おい、オレグ! 集金の時間だぜ! お前がさっさと出せば、俺たちもここを消し炭に変える手間が省けるってもんだ! さっさと終わらせようぜ!」
げっははは、と追従するような下卑た笑い声が続く。
オレグは不安そうな目を一度PCたちに向けてから、声を震わせながら門のかんぬきを外しに向かう。
オレグ「へ、へぇ……お待ちくだせえ!」
ぎぎ、と軋みをたてながら、オレグが門を開くと、盗賊たちは騎乗したまま交易所の中庭に入ってきた。
盗賊「へへへ、オレグ、女房は元気か?」
盗賊「お、いいにおいだな、朝メシもいっしょに馳走になっていくとするか」
盗賊「へへ、飯まで用意するたあ気が利くじゃねえか」
盗賊たちが油断しきっている隙を突いて、冒険者たちが襲いかかった。
一番奥まで進んでいた盗賊がジュゼッペとマルルイスの挟撃に倒れ、馬小屋のそばにいた盗賊は小屋の影からの女のささやくような声に意識を失う--リルカ必殺の”まどろみ”であった。その時間はわずか10秒足らずに過ぎなかったが、冒険者たちが首筋に一撃を加えるには十分すぎる時間だった。
奇襲を受けながらも、一番最後に交易所に入ってきた盗賊の頭はすぐに状況を悟り、仲間たちを見捨てて建物のそばに飛び出した。
しかし、そこには騎乗したアルティンが待ち構えている。
アル「待て、鼠賊め! 正義の刃を受けてみるがよい!」
アルティンが祖先から受け継いだ家伝の剣が輝く。初ラウンドからの悪を討つ一撃だ!
アル「なんせPFからは敵が死ぬか逃げるまで続くからな!w」
突撃による一撃を受けた盗賊頭はさらに逃げようとあがくも、それを阻止しようと振るわれた2撃目の悪を討つ一撃により意識を失った。
降伏した盗賊も含め、全員を捕えたPCたちだったが、〈威圧〉にも〈交渉〉にもことごとく失敗w
盗賊の頭 バイドンは悪態を吐き放題吐いた末、盗賊団の情報も大して語らぬままに……
アルティン「まあ、強盗だしね。死刑だよね。」
盗賊「ヒ、ヒィィ! お許しを! わしら、食い詰めて村から逃げて、仕方なく盗賊やってるんでさぁ」
マル「ふむ……よし、じゃあこうしよう。バイドンの首に縄をかけて梁に引っかけるから、君たちが引っ張りなさい。そんで、知ってることを隠さず話せば、特別に罪一等を減じて、身ぐるみ剥いでここを叩き出すだけで許してあげよう」
盗賊たち「ゲ、ゲェェーッ!」
他のPC「……うわぁ……」【どんびき】
GM「……うわぁ……」【どんびき】
そんなこんなで絞首刑にされたバイドンが交易所の門の横を飾る小粋なインテリア※1にされた後、南の森を流れる川沿いに盗賊たちの野営地があること、盗賊たちは「牡鹿卿Stag Lord」と名乗る、鹿の頭蓋骨で出来た兜をかぶった男の命令で強盗や野伏りを行っていたこと、しかし彼らのチームのうち、牡鹿卿の正式な子分なのはバイドンとその愛人クレッスルだけであること、子分はその証として鹿の角の文様が刻まれた銀のアミュレットを持っていることなどを聞き出した上で、盗賊たちは約束通り解放された。
アル「ぼくは秩序にして善だから、約束は守るとも!」
オレグ「……あ、そういや剣卿から、盗賊の首6つごとに、400gpの賞金が出るってお触れが……」
アル「……ま、守るよ! 守るとも! だってLGだから! LGだから!」
GM「……えらい苦しそうだなパラディンw」
とりあえず襲撃を退けたとはいえ、ゆっくりしているヒマはない。”集金”に送り出されたバイドンたちが帰らなければ、野営地にいるであろう盗賊たちの仲間が異常を感じてこちらにやってきたり、あるいは逃げ出すかもしれない。
そう判断した一行は、休む間もなく盗賊達の乗ってきた馬を駆り、地平線の向こうに見える南の森に向かった。
長くなったので後編に続くー。
---Behind the GM Screen---
PCたちは第1エンカウントをあっさり片付けているが、実は盗賊は1レベルウォーリア、頭のバイドンさえ1レベルファイターだったりするのでさもありなん。
おそらく、シナリオの意図としてはここで戦闘になれてもらおうってのと、馬を与えるつもりで馬賊にしたんだろうなーと。
というのも、kingmakerキャンペーンでは通常と異なる野外移動ルールが採用されており、PCには最初に白地図(ヘックスシート)が渡される。※2
このヘックス上を移動するに当たって、移動速度が30ftのままだと1マス5時間かかるところを、馬に乗っていれば3時間で移動できる。また、森や沼地などの地形要素でも移動時間や探索時間に差が出るため、当キャンペーンでは移動速度は非常に重要な要素だ。だって、20ftとかのときに沼を探索すると1マスで4日かかるけど、50ftなら1日で済んじゃうんだぜ? D&Dの例に違わずランダムエンカウントの厳しい当キャンペーンにとって、この時間の差は非常に大きい。馬に乗ってれば敵から逃げるのも簡単だしなw
なお、エンカウントは「朝、夕」と「夜」、「ヘックスの境界線を越えたとき」に発生する。エンカウント率は地形により差があり、「D&Dで森で寝るのはバカか命知らずのすること」という伝統をいまもしっかりと守り続けている。だって1レベルPC向けシナリオなのにCR7の敵とか混じってるんだぜw
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※1:地方によっては見せしめ効果を高めるため&防腐して長く見せしめられるようにタールを塗って、その上から羽毛を付けたりもしたらしい。暗黒時代スゲエ。
※2:Paizoオフィシャルからダウンロードできる「Kingmaker プレイヤーズガイド」(もちろん無料)に入ってるものをそのまま使用。http://paizo.com/products/btpy8dqh?Pathfinder-Adventure-Path-Kingmaker-Players-Guide
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4 件のコメント:
端的に感想をいえば「さもありなん」なのですけど、それはそれとしてアルティンとマルティンを間違えているところありませんか?
少なくとも悪を討つ一撃を使うのはパラディンであるアルティンだと思うのですけど。他にももしかしたらあるかもしれませんね。
似ている名前なのでやむをえない部分もあるとは思いますが。
ともあれ続きを期待しています。
ありゃ? ホントだ。
慌てて書くとダメネー。
修正したッス&誤字モカごっつあんですギャー
> ヴァリシアの南端の街レストヴからさらに南に広がる平原は
> 『盗まれし領土(ストーレンランド)』と呼ばれていた。
ヴァリシアではなくBrevoy(PRDJではヴレヴォイと発音)かと。
The Stolen Landは少なくともヴァリシアから1,000マイルは離れています。
うわっと、気づくの遅れましたスマンス。
あれ?何でこんなとこ間違ってんねやろ。
スンマセン修正しました誤植モカごっつあんで素。
でもBrevoyは「ブ」レヴォイだと思うのでそう直した。
ドンマイ。
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