2018年5月21日月曜日

【PF】多島海の海賊王 第16話 帰ってきた赤竜 

船長 デニックス レンジャー PL扇
主計町 アレクサンドラ ハーフエルフのアルケミスト PLL-Heart
航海長 ライルニス エルフのウィザード PL備前屋
砲術長兼船医 アマータ ハーフエルフのクレリック PLうら
書記 ソモサン モンク PLほりび
帆布長 カガン ノームのドルイド PLいしかわ

4/1
海賊評議会招集の日。

デニックスが赴くと、評議会室には評議員全員が緊張の面持ちで集まっていた。
いつもは遅れて会議場に入室するラケシスも、今日は珍しく席に着き、玉座の肘木をいらいらと小刻みに叩いている。
それとは対照的に、ラーディカがいつもの落ち着いた様子でラケシスの横に立っているが、これは幻影か映像だろう。なんせ、いまは真っ昼間だ。

時間になると同時に扉が開き、東方風の派手な衣装に身を包んだ男が断りもなく部屋に入る。
書状を捧げ持った豹頭の男は、ぴんと背筋を伸ばし、掌が常人とは逆向きについた手に捧げ持っていた書状を、時代がかった所作でばさりと広げた。


「ら……ラークシャサだ。」
列席した評議員の誰かがうめくように漏らす。

「さてもさても、評議員の皆様方にはご機嫌麗しゅう。わが主人にして御国の真の支配者たるヴェストラ・ラナシオン様より下されました親書をお伝えいたします。ご静粛に傾聴頂きますよう」



ラケシスは、その慇懃ながら明らかに自分を見下した言葉にさっと顔に血を上らせるが、かまわずラークシャサは芝居がかった口調で口上を続ける。

『親愛なるわが妹ドナーリアへ
 母亡き後も、母の名を僭称し、多島海の支配を続けておる由、遠く西方に聞き及んでいる。
 しかし、わが妹ドナーリアが母の名を継ぎ、多島海の支配権を継ぐにふさわしき者かについて、ラケシスの長子である予には大いに疑義を持たざるを得ない。
 なんとなれば、母の名を用いて支配を続けること一事を持ってしても、すなわち一妹ドナーリアの力足りず、評議会諸島を治むるに能わぬことここに明らかなり。
 
 しかし汝の力なきを思えば、母の名をもっての不行跡もまた不憫なり。
 思えば兄は30年前より多島海を離れてより、母の死も知らず、一度とて帰郷することもなし。 
 妹の憂い、悲嘆を顧みぬこと、長子たるわが不明を恥じるなり。

 心安じよ、わが妹よ。
 これより強壮にして明敏なる兄が、汝を訪い直に話を聞こう。
 そして多島海を真に支配すべき、力ある者の統治の元、手を取り合って安寧に暮らせるよう計らおうではないか。
 予に害意はなく、ただ妹の身を案じるのみ。
 畏れることはない。
 評議員たちにも真の支配者の帰還を伝え、汝が肩の荷を降ろすがよろしかろう。

 委細会見にて。
 多島海の相続人 ヴェストラ・ラナシオン』

「ヴェストラ・ラナシオン様は寛大にして慈愛溢れる御方。お出ましになりましたら、どうぞ安心してその手におすがりなされませ。そろそろお着きに…… いや、もう到着なされたようですな」

 見れば、顔はラケシスに向けたまま、豹の耳だけが窓の方を向いている。
 やがて、大きな羽音とともに、人々の慌てふためく声が近づいてきた。
 
 窓を巨大な赤い陰が通り過ぎたかと思うと、テラスのところに大変な美丈夫が降り立った。
 日焼けした肌に、輝くような金髪。端正ながら強さを秘めた彫刻のような顔には獣の爪痕のような傷あとがあったが、それさえもあえて刻みつけたアクセントであるかのように思える。鍛えあげられた四肢は、宝石のように赤い小札を丁寧に編み上げた鱗鎧の下に隠されてなお、その靱さを隠さなかった。

 男は軽く赤いマントを整えると、ぐるりと評議会員たちを見回し、次いで玉座のラケシスに目を向けた。

「久方ぶり--といっても、お前は覚えてはおるまい。なにせ、予が島を離れたとき、お前は小さな雛に過ぎなかったからな。
 ヴェストラ・ラナシオン。お前の兄、この島の正当な継承者だ。」

あまりに見事な登場に、場の全員が息をのむ中、ヴェストラは鷹揚に続けた。

「予が島を離れる間、代理をしてくれておったそうだな。
 よい、みなまで言うな。
 母亡き今、不安であったろう。つらかったであろう。
 ご苦労であった。
 予が戻ったからには、もうお前に苦労はさせぬと誓おうではないか」

「なっ…… こ、この……」

怒りに顔を青ざめさせたラケシスが言い返そうとするところに、ラーディカが割り込んで答えた。

「ヴェストラ様、お久しゅうございます。先代様よりお仕え申しておりますラーディカにございます。このたびの遠路はるばるのご帰還、評議会一同心よりお迎えいたします」
「ほう、母の代から! その忠心、苦しゅうないぞ。憶えてはおらぬが。」

ラーディカは先代ラケシスの治世から評議会の成り立ち、ラケシスの不幸な死と、その後起きた波乱、サファグンの大軍勢やタークとの幾多の戦いとドナーリアの奮闘を、いくぶん話を盛りながら、かつ大切なところや知られたくないところは所々はしょって説く。

デニックス(はー、さすがラーディカ先生…… 大したことしてないドナーリアが、ものすごく立派な指導者みたいに聞こえる……)

一方で長子であるヴェストラが支配権を相続することの正当性を説くとともに、困難を推して帰還した偉大さを挙げて持ち上げる。

デニックス(はー、さすがラーディカ先生…… ほめてるようで冷静に聞くとすごく馬鹿にしながらヴェストラを持ち上げていい気分にさせてる……w)


ヴェストラ「ふはははは。そうであろう、そうであろう。今後は妹と手を携え、多島海の支配を盤石にするだけでなく、我が軍勢の力を合わせて勢力を拡大していこうではないか。」
ラーディカ「さすが若君様。軍まで率いておいでなのですね。」
ヴェストラ「うむ、とはいえ私が切り取ったのは西の陸軍国、船戦は得意としておらぬ。そこで、まずは母の使っていた”杖”、サファグンどもを絶滅せしめたという、あの強大なる”杖”を私に返還するがいい」
ラーディカ「……なるほど、あの”杖”のこともご存じとは。しかし、先だってのサファグンとの大いくさで、”杖”は力を失っております。その力を取り戻すまでに3月ほどかかりますほどに、それが終わりましたら、改めてそこのデニックス評議員に”杖”の場所まで案内させましょう」
ヴェストラ「なるほどそうか。よいよい。これまで長く国を空けたのは私の責、もう三ヵ月など、瞬きするようなものよ」
ラーディカ「さすがはヴェストラ様の寛大さは、ラケシス様が再臨されたかのようですわ」
ヴェストラ「わっはっは、そうおだてるな、わっはっは」

デニックス「(……ラケシスが寛大だったなんて話、聞いたことないけど)」
ラーディカ「(あんた、あの子がどんだけキレっ早いか廃都で見たでしょ。四六時中大体いつもあんな感じだったわ)」
デニックス「(……もうやだこの国)」

ヴェストラ「ちょうど我が国でも、現在こちらに向かう準備をさせておるところだ。それでは3ヵ月後、7月1日に戻ろうぞ。我が船団を率いて戻るによって、お前らは支配権の譲位と”杖”の返還を祝う式典を用意しておけ。」

そう言うと、ヴェストラは上機嫌のうちに外窓をさっと乗り越える。
その直後、再び巨大な赤い影が窓をかすめ、そのまま塔の周りを2周すると、西の方に飛び去っていった。

ラークシャサ「話が順調にまとまりまして、祝着至極にございます。私はこちらで7月1日の準備とともに、主の連絡係を務めさせていただきます。今後ともよしなに」

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デニックス「というわけで、3ヵ月以内になんとかしないといかん」

ラーディカ「ヴェストラはお察しの通り、あまり頭はよくないけど、仮にも超大型の赤竜。呪文への抵抗もあるわ。でも、”杖”を収めた部屋におびき寄せれば天井が低いから飛行は妨げられるし、逃がさないようにするしかけも作りやすいわね」

カガン「あ、だまし討ちするの決定なんスねw ですよねーw」
デニックス「我々、超大型のドラゴンと正面切って戦えるレベルではないですしねw」
ライルニス「それに私たち、なんだかんだ言っても海賊ですしwww」

ラーディカ「もう一つ、多島海には竜によく効く”竜絶蘭”という植物が生えてるわ。無味無臭で竜以外の生き物には効かない強力な毒草よ。以前使ったから、効果は実証済みだけど*1、残念ながら在庫はないの。でも、生えている島はわかっているから、3ヵ月の間に集められるだけ集めてらっしゃい」」

竜絶蘭の生えている島までは240マイルほどで、船で丸4日くらいかかりそう。
また、島もかなり広いとのことで、2ヵ月くらいは活動できる物資を揃えて出航することに。


4/5
つつがなく竜絶蘭の島に到着。
まずは島の外周をぐるりと見回り、波も穏やかな河口付近の入り江に錨を降ろす。当然ながら船着き場などはないので、副長にこの位置にいるよう命じて我々はボートで砂浜に上陸する。
河口には朽ちた船がそこここに見られる。難破したというより、つなぎっぱなしにしていたら朽ちて沈んだ、といった様子なのが奇妙といえた。

また、川岸には異常に精巧に作られた石像もちらほら。
服のしわ一つひとつ、髪の毛一筋まで丁寧に彫刻されたその石像は、この島に非常に腕の立つ石工がいることを想像させ

ライルニス「あ、ゴルゴンかバジリスクがいるんじゃないですかね」

……ギャー。

4/8
探索を開始して3日。これといってあてもないので、とりあえず北西側に進む。
途中、竜絶蘭を2本見つけたりしつつ、丘の中腹に洞窟を見つける。

洞窟の奥に竜絶蘭が生えているのを見つけた我々が、警戒しつつ洞窟に入ると、そこは馬ほどもある大きなアリの巣だった。倒しても倒しても奥からアリがやってくる。
まあまあ頑丈なため前衛が手間取っていたら、アリは穴を掘って一行の後ろに回りこんで後衛陣を攻撃しはじめた。

カガン「うわ。こらアカン。みんなは撤退を。竜絶蘭は俺がなんとかする」

カガンは自然の化身能力でアース・エレメンタルに変身すると、仲間が撤退している間にアリのいない地中を通って竜絶蘭を回収し、仲間たちの後に続く。
しかし、どうにか洞窟を脱した一行は、丘を駆け上ってくる金属色の牛のような生物に行く手を阻まれていた。

ライルニス「ゴルゴン! ここで来るのかよ!」

ゴルゴンは撤退の先頭に立っていたライルニスに猛突撃を敢行し、さらに一行に石化ブレスを吹き付けようと深く息を吸い込む。

ライルニス「させるか! 燃え尽きろ!」

ライルニスの全力ファイヤーボールがゴルゴンを焼く。
その後、ブレスだけは吐かせてはならじと前衛陣が一斉に駆け寄ってダメージを与え続けたところにデニックスが”カメレオンの足捌き”*2能力で挟撃をとっての《強打》攻撃でとどめを刺した。

デニックス「いかん、アリが来る! 逃げるぞ!」

こうしてハードな一日が終わり、大した収穫もないままに1日が過ぎていく。
以下次号。


GM 「うぇー、hp100越えのゴルゴンが2Rで沈むかー。もうちょっと敵の強さ考えないとだなー」
全員「うるせぇぇぇぇ!」

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*1:デニックス「……この人さらっと”試した”言ってたけど、この人の近くで謎の衰弱死を遂げた竜が1頭いるよね?」カガン「うん、相続問題の原因になった竜だよね?」アレクサンドラ「私、見たことあるヤツのことですよね?」全員「…………あははははは【全員ちっとも笑っていない目で】」
*2:APG所載のレンジャーのアーキタイプ スカーミッシャー(遊撃兵)が5レベルで獲得できる能力のひとつ。なぜか移動力が2倍になる。……カメレオンって爆発的に足早くなったりする動物なん? チーターとかじゃダメだったの?

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