キマイラやジャイアントと戦いながら、
歩き通すこと約10日。
人の子1人おらぬ荒廃した山の中に、デニックスとゆかいな仲間たちは半ば崩れた城を見つける。
城壁はひびとツタに覆われ、どんよりと冷たい雰囲気に覆われている。
おそらくここが目的地、魔術師ラーディカのマスター・ヴァンパイア アルバーの城であろう。
時刻はすでに日暮れ前である。
デニックス「まさか…… カガン…… このまま…… あしたの日の出まで一時退却ってことはねえだろうな…… いっておくがカガンッ! おれはこのままおめおめと逃げ出すことはしねーからなッ!」
カガン デニックス
ドドドドド
ライルニス「やー、いうても私呪文打ち止めっすわー。ジャイアントで使い切ってます」
アマータ「私も上位レベルの呪文使いきってますんで、ちょっと厳しいかな……」
デニックス「……ですよねーw」
というわけで、一行はケイブジャイアントの住んでいた洞窟に一泊し、翌朝改めて出直すことにした。
GM「ゴゴゴゴゴ……」(夜に城に入って欲しかったらしい)
カガン「誰が夜に行くかそんなところw」
***
船長 デニックス スレイヤー PL扇
主計町 アレクサンドラ ハーフエルフのアルケミスト PLL-Heart
航海長 ライルニス エルフのウィザード PL備前屋
砲術長兼船医 アマータ ハーフエルフのクレリック PLうら
書記 ソモサン モンク PLほりび
帆布長 カガン ノームのドルイド PLいしかわ
***
さて翌朝。
陽光のさんさんと降り注ぐなか、ヴァンパイアのいるかもしれない城跡を調査開始。GM「ギギギ」
城は攻城された後放棄されたようで、あちこち焼かれた跡があり、兵士の死体とおぼしき白骨死体も無数に放置されている。
中庭は胸ほどの背の草に覆われ、状況がつかみにくい状態だったが、中程に開けた場所があるようなので近寄ってみると、人の形に草が生えていない場所があり、ぽつりとほうれん草のような草が一本だけ生えている。
デニックス「……なんだろ。人の死んだあとの形に生える、てのは聞いたことがあるけど」
GM「デニックスが近寄ると、ほうれん草が根元からずぼっと飛び出す! 人型のそれはキーキーと甲高い声を上げながら襲いかかってきます」
全員「うへぇ…… アレだよ……」
ええ、マンドラゴラでした。
前衛が金切り声による吐き気で悶絶している内に、唯一耐えられたデニックスが組み付かれ、吸血(【耐】ダメージ)を受ける。
ライルニス「こんなところで耐久力ダメージはヤバイ! ここは懐かしの”デニックスにグリース”で!」
割と忘れられがちですが、グリースかかってるクリーチャーは組み付き脱出に+10ボーナスはいります。渋い。
組み付きから脱したところで、マンドラゴラは金切り声使用。
30ft内に意志DC15で吐き気を振りまく地獄の特殊能力である。
幸いデニックスが抵抗できたものの、ほかの前衛は全滅してた。ヤバイ。
”空き地”のそばには割と新しい、狩人の様な格好をした死体が転がっていた。近隣の狩人が迷い込んだものだろうか。
中庭を抜け、一番大きい建物に入る。4階建てだった建物はかつて火が放たれたためだろう、2階と3階の床が抜けて1階のフロアに山積みのがれきになっており、塔の壁に沿って作られたらせん状の階段だけが残されていた。
カガン「(目をじっとすがめながら)……3階の階段登り切ったところ…… なんかいるな…… 動いてないけど人影だ…… その上に…… なんだろ、黒いモヤみたいなのがいるぞ」(〈知覚〉達成値32)
一応確認しておこう、ということで近寄ると案の定シャドウが。
とはいえ準備ができてればそう怖い相手でもない。あっさり撃退して階段を上りきると、窓のあたりに割と新しい死体が。
中庭で死んでいた狩人と似た格好をした男で、死んだ時期も同じ頃と見える。
男は周りの床や壁に窓から見えるものをいろいろ記録していた。
それによれば、城の建つ崖の中腹に横穴があるという。
カガン「……ほんとだ。横穴あるわ。かなりがんばって崖降りないといけないところだけど、この城の基部あたりに入りこむ感じで」
デニックス「このメンツで崖降りるのはきついなあ……」
ソモサン「城の基部か。1階のがれき除けたら降り口見つかったりしないかね?」
1階を探し回ってみると、がれきに埋もれたところに地下に向かう階段がある。
崖を降りる危険は犯せない。ということで数時間かけてがれきを掘り、発見された地下室へ。
地下室は自然洞に手を入れた感じの広いもので、少し進んだ先に外光の入る広間があった。ここが外から見えていた横穴だろうか。そこにはなぜかひからびたグリーンドラゴンの古い死体が転がっていた。
吸血鬼が潜む(かもしれない)城でも、陽光の差す場所なら安心できる。
まずはあそこで状況を確認しよう。
という一瞬の油断が一行を流れた瞬間、その油断を見事に突くように、広間の入り口に仕掛けられた格子戸がドン、と音を立てて落ちる。
先に広間に入っていたデニックス、ソモサン、アレクサンドラと、後衛のわれわれが分断されたところで、隠れていたヴァンパイア・スポーンたちが前衛陣に襲いかかる。
カガンはアレクサンドラの持っていたリデュース・パーソンで小さくなり、格子の隙間を抜けて援護に回る。
入口の上のアルコーブに隠れていたアルバーを名乗るヴァンパイアが急所攻撃付きのクロスボウを射かけて来るなど苦しい状況にはなったものの、前衛陣の踏ん張りと、おなじみフレイミング・スフィアの働き、そしてアマータの《アンデッド威伏》でスポーンの一匹が威伏されたのが決定打となった。アルバー以外のヴァンパイアが全て倒れる。
しかし腐ってもヴァンパイア。
アルバーはガス化して入口の格子戸をすり抜け、なんとか通路を逃れようとする。
汚いさすがヴァンパイア汚い。
デニックス「させるか! 行ったれフレイミング・スフィア!」
アレクサンドラ「食らえ聖水バシャー」
アルバー「グワーッ!」
ついにhpがゼロになったアルバーは、霧となってゆらゆらと広間の奥へ移動していく。
カガン「おいスポーン、あいつの棺どこだ」
威伏されたスポーン 「……プイツ」
アマータ「どこ?」
スポーン「(イヤそうに)奥の隠し部屋です……」
いわれた場所には隠し部屋があり、4つの棺が並べられている。そして一番の上座に当たる部分には、バラバラにされた、かつて棺だったとおぼしき材木と、一握の塵が集められていた。
カガン「……なんだこれ」
スポーン「……プイツ」
アマータ「なにこれ?」
スポーン「(イヤそうに)それはですね……」
カガン「めんどくせえなコイツw」
棺桶の中身をさっきの陽光のさす広間にぶちまけたりしながらスポーンに聞いた話によれば、自称アルバーを含めた彼らは皆本物のアルバーの配下で、偵察兵として城外に出ている間に何者かに攻め滅ぼされ、あとには緑竜が居座っていたという。どうにかスポーン5人でドラゴンを倒し、一番強かったスポーンがアルバーを名乗って城に居座っていた、ということのようだ。
カガン「……てことは、アルバーは?」
スポーン「(無言で塵と棺だった木ぎれの山を指さす)」
デニックス「じゃあ、ご先祖様はアルバー退治には成功してたってこと? でもあのグリーンドラゴンはなんの関係が?」
それがわかったのは、棺の隠されていた部屋に残された宝物を調べているときだった。
ミルラルのブレストプレートなどに混ざって、我々がラーディカから与えられていた映像記録装置が残されていたのだ。
記録を再生してみると、デニックスに似た面影の男が興奮気味に話しているところが映し出される。デニックスの先祖、カシウスだろう。
カシウスはラーディカに向けて、親しみを越えた、夫のような口調でアルバーを滅ぼし、全ての任を果たし終えたことを語っていた。ラーディカをあの島に縛り付けるものはもういない。
そううれしそうに宣言した直後だった。
広間の壁に開いた穴から大きなグリーンドラゴンが飛び込んできて、陽だまりに棺を動かしていたカシウスの仲間をそのかぎ爪でひと薙ぎしたのは。
カシウスが突然の物音に振り返ったとき、映像の中のドラゴンがこちらを向いて口を開いた。その笑みの形に歪んだ口から何かが吹き出され、カシウスが撮影装置に向かって吹き飛ばされたところで映像は途切れていた。
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カシウスらの遺品と、ついでにヴァンパイアたちのお宝を回収し終えたわれわれは、威伏したスポーンに陽の中に飛び込むよう命じた後、因縁の詰まった古城をあとにした。
アルバーの伝説と、いまも残る吸血鬼の伝説はここに滅んだ。
われわれはテッサロニキで馬を処分し、多島海への帰路に就いた。
というところで以下次号。
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