2023年1月31日火曜日

ゾンビで荒廃した世界に、君は希望を見つけ出す -Hopefinder-

ここ2月くらいのWotCによるOGLを巡る大騒動のさなか、PathfinderのメインデザイナーJason Bulmahnの発言を追ったりしてたら、DrivethruRPGで「ホープファインダー」ってゲムを見つけたのでご紹介。


https://www.drivethrurpg.com/product/417702/Hopefinder-Apocalypse-Bundle-BUNDLE

ホープファインダーはPF2のシステムをベースにした現代~近未来もので、いわゆるゾンビものの世界を描いたTRPG。ちなみにマスターは「ナレーター」と呼ばれる。

舞台は2032年の地球。
10年ほど前、突如発生した疫病Zは、当初豚を凶暴化させる疫病として、世界の食糧供給に大きな影響を及ぼした。
しかし、やがて疫病Zは人に伝染するようになり、さらには疫病で死んだものを人の肉を求める歩き回る死体と化すことがわかる。
わずか数年で、地球上には50万人程度しか人類はおらず、70億の死体が生きた肉を求めてさまよい歩いてる世界と化した。この事件は「Fall」と呼ばれている。


文明が荒廃し、ゾンビがあふれかえる世界で、PCたちは希望を見いだすことができるのかーー
それが「Hopefinder」だ。

荒廃する現代(近未来)世界なので、火器や内燃動力もある。
電気さえさえあればコンピュータなども使用可能で、ガソリン式発電機やソーラー発電機が大事な命綱として共同体に大事にされてたりもする。
なんかよくわかんねえけどまがまがしい感じのバイクとか妙に強そうな車とかも実装されてるからV8信者にも安心だ。ヒャッハー!


ちなみにゾンビもただうろつき回るリビングデッド「クロウラー」から、ムキムキの「ハルク」、壁登りなど機動力を身につけた「リーパー」、体内の寄生虫を吹き付けてくる「インフェステッド」、触手を伸ばしてくる「ミュータント」、さらには疫病Zに感染してクッソ強くなった(ついでにあちこち変形した)動物たちなど、あらゆる作品のゾンビを再現できる多種多様さでPCをお出迎えしてくれる。

あと、こんな世界なので当然「人間にとって最大の化物は人間」の法則に準拠して、安住の地を求めてさまよう放浪者のほか、PCたちの集落を虎視眈々と狙う盗賊団や人斬りに狂うカタナなんかも実装されているからあんしんだ。


***

PCにはいわゆる「クラス」はなく、背景や特技、技能で経歴、そして後述のフラッシュバックで獲得する「Role 役割」でできることを示していくスタイル。
各PCは、作成時に自分のRoleを決定する(ただしPC作成時点ではRoleの能力が得られない:後述)。
Roleには[Criminal 犯罪者][Medical Professional 医療従事者]など16種類があり、それぞれが「Fall」以前の経歴や「Fall」後どのようにして生きてきたかを表現する。
例えば[Child 子供]ならそのPCは世界が崩壊した時子どもで、荒廃した世界で育ったことによって生き残りに適した能力を得る。具体的には、追加のHopeと、〈軽業〉等のスキルや  近接攻撃用の特技などがもらえる。
[Soldier]なら、かつて兵士だった時の経験を思い出し、イニシアチブに+2ボーナスと「武器の準備ができていればフリーアクションで攻撃できる」能力を得るほか、戦闘や運動系の技能・特技を獲得できる。
Roleは「クラス」ほど強力な能力をもたらしてくれるわけではないけど、現代風世界の各キャラクターの背景を能力の差別化として表現するのにほどよい印象。
特定のクラスがなくて、職業とかの経歴でできることが違ってくるあたり、CoCみたいな感じと言えるかも。

Hopefinderに特徴的なルールには、「Hope 」と「フラッシュバック」の2つがある。

Hopeは各PCがスタート時に3ポイント持っており、いわゆるヒーローポイントとして使用でき、ダイスリロール、クリティカルヒット確定、HPが0になった時の安定化自動成功などに使える。
セッション終了毎、フラッシュバック毎、「希望を感じた」時などに獲得できるけど、疫病Zに感染すると毎日1ずつ喪失して0になるとゾンビ化する。
文字通りの「希望」を意味している数値ってわけだ。
ちなみに疫病Zに罹る(Stage1)と毎日Hopeが失われ、Hopeが回復しなくなる。Hopeがなくなり頑健セーヴに2回連続成功できないとStage2へ。症状が悪化し、stage3に達すると死んでゾンビに変貌する。 

「フラッシュバック」はいわゆるナラティブ的なイベントを発生させるルールで、全PCが1セッション中1回ずつ起こすことができる「回想シーン」だ。
プレイヤーがどういう内容・結末か、またいつ発生させるかを決めてよく、数分の独り語りとして過去に何があったかを説明することで、その出来事に関連する能力や特技を得ることができる。よくあるゾンビ映画の回想シーンの再現であるとともに、セッション中にPCを成長させるシステムにもなっている。

フラッシュバックには「Before」「Fall」「Respite」「Depths」「Hope」の5つのType 形式がある。「Respite」ならfallのただ中で心休まった出来事、「Hope」なら希望が見いだせた出来事、みたいな感じで場面ごとにどれを使うかを決める事ができ、発生するとその場で特技が1つもらえる。ロマサガとかにある「ひらめく」みたいな感じだね。
ちなみに1回目のフラッシュバックは「Before」でやることと決められており、これでPCのキャラ設定や背景、できることを他のPLに伝えるという役割も果たしてると思われる。意外とよく考えられてるなコレ。

PCの成長テーブルは5レベルまでしかなく、長期にわたって遊ぶことは想定されてなさげ。ていうか、キャラクターが死ぬのが前提としてデザインされており、ルールにも「このゲームよく死ぬから」的なことが明記されてて潔い。

死んでも成長度を引き継いだうえ、前のPCより装備が充実した別のPCで登場できるってルールが実装されてるから、自殺的な英雄行為も惜しみなく実行可能。
おまけに死んだPCは回収された装備からは「mement」という思い出の品が生成され、回収して思い出を語ると全PCにHopeが与えられる至れり尽くせりぶり。
アレですよ。敵を巻き込んで自爆した仲間のスカーフが風に舞って飛んでくるのを拾い上げ、ぐっと握りしめて生き抜くのを誓うやつ。アレが完全再現できる。
どんどん死んでいこう。

***

PCたちはゾンビに対してささやかな抵抗しかできず、なんとか生き抜くために保存食を探したり、安全な寝床を確保したりというのに精いっぱい。
しかし、ゾンビ化を防ぐことができる薬剤が存在したり、避難民たちが集まってどうにか生きていける集落が生まれたりと「Hope」が完全に失われたわけではない。
そんな世界の中で、じたばたとのたうち回り、あがきながら今日を生きていく。
それがhopefinderだ。

ルール的にはPF2の簡易版みたいな感じだけど、使うルールが少ないから実はTRPG初心者になれてもらうのにもいいのかもって思った。
ファンタジーものよりゾンビもののほうが世界観の説明とかイメージの共有しやすいとこあるしね。

ゲーム自体は地味で苦しい場面が多い一方で、死んでもキャラ性能が引き継がれるルールがあるおかげで「先に行け、ここは俺が守る」とか「ゲートを閉じる電力を通すために自分が導線になる」とかをペナルティなくできるのは面白い。
やる前にはフラッシュバックでPC語りした上に自バフかかるし。
見せ場とルール上の有利をうまく融合してシステムに落とし込んでるので、ヒロイックな場面が作りやすい良いルールなんじゃなかろうか。

あと前述したフラッシュバックの「Before」で各PCがどんなやつかが説明されるシステムとか、「そういえば昔こんな事があった……」って過去のモノローグから逆転の一手が掴めるとことか、リプレイやプレイ動画向きのシステムかもって思った。


まあこんだけ書いといてまだ1回も遊んでないんだけどな!
遊んだらまたレポート書くよ! くそ! 余裕!

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